登米町森林組合が目指す林業のすがた
前ページの課題に立脚して、登米町森林組合では3つの目標を掲げて取り組んでおります。
- 人づくり ~ 若手林業技術者の育成
- 森づくり ~ 新しい時代に対応する森林施業体系の確立
- 森林資源の有効活用 ~ 従来の林業の枠にとらわれない多面的な取組
① 人づくり~若手林業技術者の育成
林業の低迷に伴う木材生産活動の停滞の影響で、林業就業者は全国的に減少・高齢化の傾向にあります。そこで登米町森林組合では、若手林業技術者の育成に注力しています。
後述するように、登米町森林組合では全国でもいち早く林業の機械化に着手しておりました。
林業の機械化は、生産コスト削減と安全作業の点から労働環境の改善に寄与し、若年林業技術者の雇用を進めるきっかけとなりました。平成3年には「林業機械化特別班(Forest Machine Project Team,略称FMP)」を発足、林業の機械化に伴う作業体系の確立とともに、就労環境の整備を行ってきました。
② 森づくり~新しい時代に対応する森林施業体系の確立
林業は50年以上の年月を要する産業です。その50年間には良質な木質資源を生産するため、様々な育林作業が人の手によって施されます。そして、伐採された後の山にはまた苗木を植え育てていきます。林業の仕事はこうした息の長いサイクルのなかで行われています。その為、森林の適切な整備を進め、それを通じて供給される木材を適切に利用する為には、綿密な計画が必要となってきます。
この点に立脚して、登米町森林組合では下記の取組を行っています。
・「間伐推進5ヶ年計画」の策定:地域森林資源の現状、木材資源の需要動向を加味した上で、作業体系の整備や後述する林業機械の導入、施業集約化等を計画的に実施してきました。
・林業の機械化:林業における機械化の進展は、生産性の向上やコストの削減、労働強度の軽減などに大きく貢献します。本組合では全国でもいち早く林業の機械化に着手してきた歴史があります。昭和45年にベンツのウニモグ(多目的運搬車)を宮城県で初めて導入、昭和52年には地元自動車会社が製造した林内運搬車・陵岑(リョウシン)号1号車を導入しました。その後昭和57年からプロセッサ、フォワーダ、タワーヤーダを順次導入してきました。
・施業集約化の推進:林業の採算性を向上するためには、林業機械を活用した効率的な作業体系の確立とともに、隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて施業の集約化を進める事が重要です。これにより、路網の効率的で合理的な配置や、林業機械による効率的な作業が可能となり、木材生産コストの低減を図る事が可能となります。 登米町森林組合では、管轄エリアを4団地に分けて複数の所有者の森林を取りまとめた「森林施業計画」を以前から策定。その後、平成26年10月に「森林経営計画制度」が承認されています。
③ 森林資源の有効活用~従来の林業の枠にとらわれない多面的な取組
林業は里山地区の基幹産業です。森の恵みを最大限に活用しつつ守り育てていく事により、私たち人間は森林がもつ多面的な機能を享受することができます。
登米町森林組合では、従来の林業の枠にとらわれない多面的な取組を行っています。
・木材加工と木の住まいづくりの推進:素材生産から製材加工さらには高次加工、木の住まいづくりに至るまでを一貫して行う地域森林資源の有効活用の拠点として、平成7年に「プレカット工場」を建設以来、公共施設や公園土木への木材の供給、木造住宅の建設等を手がけております。
・原木しいたけの生産:手間と時間を惜しまず、昔ながらの原木栽培にこだわりを持って、安全でおいしいしいたけの生産を心がけています。近年はしいたけの需要が減少傾向にありますが、各種加工食品(椎茸麺やレトルト加工食品)の製造販売も行い、全国にお届けしています。
・森林セラピーを活用した健康づくり:さらに従来の森林・林業の枠の中での垂直展開から、広く地域・人と森林の関係を深めていく水平展開を行っています。その核となる取組が「森林セラピー」です。
現代人はさまざまなストレスを抱えながら暮らしていると言われており、これを裏付けるかのように国民医療費は、平成元年の約20兆円から平成24年度には39兆円を超えています。そこで森林浴として知られている森林のもつ癒しの効果を科学的に解明して、健康づくりに積極的に役立てようという試みが森林セラピーです。現在全国で60の森が認定されており、宮城県では「登米ふれあいの森」唯一認定されています。登米町森林組合では森林セラピーを活かし、登米市、東北文化学園大学と共同で地域高齢者の健康づくりに積極的に取り組んでいます。
・キャンプ場の運営:また、森林セラピー事業と連携したキャンプ場「キャンピングビレッジ 登米森林公園」の運営もおこなっています。山間の小さなキャンプ場ながら年間のべ5,000人の来園者がある登米市有数の宿泊観光施設です。森林での滞在を通して、自然に癒されつつ、自然の恵みに感謝して、生きる力や喜び、幸せを実感してもらい、森林を身近な存在として感じていただく事を目的としています。
また、東日本大震災以降は木造応急仮設住宅や木造災害公営住宅の建設で得た知見を基に、太陽熱を効率的に利用して大量の木材を乾燥しながらストックする事が出来る「太陽熱木材乾燥庫ToSMS」を建設。この施設を活用して高品質な木材を安定的に、しかもエコロジカルに生産できる体制を整備しています。
今、私たちが活用している森林資源は、数十年前から木々を育ててきた多くの先人たちの努力の賜です。登米町森林組合では林業のあるべき姿を常に追求しながら、森林資源を有効に活用し、未来の方々に森林を託すための取組を行っています。
これが登米町森林組合が掲げる「百年の森」の姿です。